抄録
近年,精神病早期介入の活発化に伴い,初回エピソード統合失調症や精神病の発症危険群である「アットリスク精神状態(at risk mental state : ARMS)」を対象とした脳画像研究が増えつつある。こうした早期精神病を対象とした横断的および縦断的な磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging : MRI)研究の結果から,①後に精神病を発症する ARMS 群では発症に先立ちある程度の脳形態変化を認め,これらの一部は将来の発症予測因子であること,また②統合失調症をはじめとする精神病性障害では顕在発症から初回エピソード中にさらに活発な進行性の脳体積減少が生じることが示唆された。本稿ではこれらの研究結果を概説し,早期精神病における神経生物学的所見の臨床応用に向けた課題についても言及したい。