日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
自閉症スペクトラム障害における oxytocin の有効性
棟居 俊夫
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2011 年 22 巻 1 号 p. 35-38

詳細
抄録
Oxytocin は下垂体後葉から血中に分泌されるだけでなく,主に樹状突起から脳内にも分泌される。この際に CD38 が重要な役割を担っており,CD38 knockout マウスでは oxytocin の十分な分泌がなされない。CD38 の DNA 解析により,exon 部分のある single nucleotide polymorphism(SNP)を有する自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder : ASD)者の血中 oxytocin 濃度は SNPを有さない ASD 者に比べ有意に低かったが,この SNP と ASD との関連性を十分に示すことはできなかった。鼻腔投与された oxytocin は血液循環を経ずに直接に脳内に移行すると考えられる。また脳内では半減期が長く,広く拡散することが可能であり,かつ受容体に結合するとその神経細胞は oxy-tocin をさらに分泌する。Oxytocin が ASD の症状の一部を改善する臨床研究がいくつかある。 Oxytocin nasal spray による ASD 者を対象とした長期間の臨床試験が望まれる。
著者関連情報
© 2011 日本生物学的精神医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top