抄録
Rett 症候群(RTT)は,乳幼児期の筋緊張低下,自閉傾向,重度の精神遅滞,獲得されていた手の合目的的な運動の喪失と特有な手の常同運動,頭囲などの成長減速が年齢依存性に出現し,てんかん,過呼吸や無呼吸などの呼吸障害,小さく冷たい手足や便秘などの自律神経の異常などを伴う発達障害である。MECP2 遺伝子が原因遺伝子であることがわかっているが,脳における役割はまだ不明な点が多い。病態には,生後 3 ~ 4 ヵ月に臨界期をもつ脳幹モノアミン系の異常が起こり,生後発達期の認知機能発現のための神経構築の形成障害をもたらすと想定されていた。実際,ノルアドレナリン,ドパミン,セロトニンなどの生体アミンの変化が RTT 患者で報告されており,MECP2 遺伝子欠損マウスでも同様の所見が見出されつつある。現在の研究状況とマウスモデル由来の ES 細胞や iPS 細胞を用いた今後の研究の可能性ついて述べた。