抄録
統合失調症の発症早期に支援することで予後が改善しうるが,症状を客観的に評価できる指標は乏しい。本研究は精神病発症超危険群(UHR)22名,初回エピソード精神病(FEP)27名,慢性期統合失調症(ChSZ)38名,および健常対照者(Control)30名について,文字版語流暢性課題(LFT)中の血流変化を近赤外線スペクトロスコピィ機器(NIRS)で計測し,臨床病期に注目した前頭葉機能障害を検討した。両側腹外側前頭前野(VLPFC),両側前部側頭皮質(ATC),および前頭極前頭前野(FpC)領域では,臨床病期早期から後期まで同程度に活動が低下し,両側背外側前頭前野(DLPFC)および右 VLPFC領域では,臨床病期の進行に沿って活動が低下していた。NIRS によ って精神病発症前後の症状を客観的に計測し,臨床応用可能性を見出した。今後は縦断研究を進め, NIRSを用いた客観的指標の臨床応用を進めていく必要がある。