日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
統合失調症において年齢による変化が皮質の菲薄化に及ぼす影響についての研究
久保田 学
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ジャーナル オープンアクセス

2012 年 23 巻 1 号 p. 71-76

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抄録

統合失調症における皮質の菲薄化は,死後脳研究が示唆する神経細胞網の密度減少など,病理的変化を反映すると考えられている 7)。一方で,皮質の形態学的異常が年齢に伴い進行性の病理的プロセスを示すのか否かについてはいまだに結論に至っておらず,長らく争点になっている 1,3,8,12,16 ~ 18)。本稿では,統合失調症において年齢による変化が皮質に及ぼす影響について総括するとともに,surface-based analysis の手法を用いて皮質の厚みに着目した研究知見 10)について述べる。患者群では全脳において,また前頭前野や側頭葉を中心とする局所においても,皮質の菲薄化がみられた。年齢による変化と皮質厚との相関については,全脳・局所いずれにおいても両群で同様のパターンを示した。これらの結果から,統合失調症における皮質の菲薄化は,罹病期間全体というよりもむしろ発症前後の比較的限られた時期の病理的プロセスを反映している可能性が考えられる。

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© 2012 日本生物学的精神医学会
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