日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
統合失調症の脳神経回路修復─薬物・細胞コンバインド療法の可能性の検討
鵜飼 渉小野 貴文橋本 恵理金田 博雄白坂 知彦五十嵐 健史木川 昌康渡邊 公彦吉永 敏弘石井 貴男館農 勝小林 清樹齋藤 利和
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2012 年 23 巻 2 号 p. 109-114

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抄録

胎生期に Poly I :Cを処置した統合失調症モデルラットを作成した。モデルラット群は,新奇物体探索試験における記憶・認知機能,社会相互作用試験における社会コミュニケーションの各機能に異常を示した。これに対し,モデル動物に神経幹細胞を経静脈的に移植した群では,その異常が正常対象群に近いレベルへ改善されることがわかった。また,モデルラットに移植した標識神経幹細胞は,1 ~ 6ヵ月以上の期間,前部帯状回,海馬,扁桃体を含む脳の諸領域に分布,生存し,移植3 ヵ月の脳内では,海馬および扁桃体でGAD陽性の細胞(GABAergic neuron)に分化・成熟していることを観察した。加えて,抗精神病薬のオランザピンを併用処置することで,移植細胞がより高率で脳に移行,生存する可能性が示唆された。これらの結果は,統合失調症や胎児性アルコールスペクトラム障害などの,胎児期~幼年期にかけての脳神経発達障害の病理と関係が深い精神疾患に対する新たな治療手段としての,“薬物+幹細胞移植”療法の可能性を示唆する所見であると考えている。

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© 2012 日本生物学的精神医学会
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