日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
23 巻, 2 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
  • 白川 治
    2012 年 23 巻 2 号 p. 89
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
  • 林(高木) 朗子
    2012 年 23 巻 2 号 p. 91-96
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    統合失調症関連遺伝子の多くがグルタミン酸伝達に関与することより,グルタミン酸作動性シナプスは,本症における重要なシグナル伝達経路の1つと考えられている。われわれは,統合失調症関連遺伝子として有力な遺伝子の1つである DISC1(Disrupted-In-Schizophrenia-1)のグルタミン酸シナプスにおける機能を解析し,DISC1ノックダウンは短期的にはhyper-glutamatergic 状態を惹起する一方で,その後にグルタミン酸作動性シナプスの著明な減少およびhypo-glutamatergic 状態になることを見出した。これらの所見は,ヒトサンプルを用いた臨床医学的所見とも一致し,すなわち,脳画像検査による本症患者の縦断的な追跡によっても,疾患前駆期/病相早期における hyper-glutamatergic 状態が,その後のhypo-glutamatergic状態へ推移する病態の変化と良く符合する。統合失調症の前頭前野シナプス密度の減少は度々追試されており,前頭前野のシナプスを保護することが発症防止および症状の軽減に関与するというシミュレーションも報告されている。そこで,われわれは,初代大脳皮質神経細胞へのDISC1ノックダウンを病相初期の病態生理(hyper-glutamatergic 状態)の 1つの細胞モデルとして使用し,シナプス保護作用のある低分子化合物をスクリーニングし,グルタミン酸シグナルの下流分子として機能するキナーゼ阻害剤のいくつかが,有意にシナプス保護作用を有することを見出した。本稿では,病因としてのグルタミン酸シナプスについて概説し,グルタミン酸伝達上の druggableな因子を標的とした新たな治療戦略の可能性について考察する。
  • 橋本 謙
    2012 年 23 巻 2 号 p. 97-101
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    近年,統合失調症のグルタミン酸仮説に基づいた多くの新規治療薬の開発が進められている。特に,代謝型グルタミン酸受容体mGluR2/3作動薬,グルタミン酸受容体のサブタイプの1つであるNMDA受容体を活性化するような薬剤,たとえばD型セリンおよびD型アミノ酸酸化酵素阻害薬の併用,NMDA受容体近傍のグリア細胞に存在するグリシントランスポーター1(GlyT-1)阻害薬などが注目されている。また,第二世代抗生物質ミノサイクリンは神経突起促進作用を有し,精神疾患の動物モデルでの治療効果も報告されており,統合失調症を含む多くの精神神経疾患の治療薬としての可能性が指摘されている。本稿では,NMDA受容体低下仮説に基づいた統合失調症の新しい治療薬の開発状況およびミノサイクリンの治療薬としての可能性について考察したい。
  • 前川 素子, 大西 哲生, 吉川 武男
    2012 年 23 巻 2 号 p. 103-107
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    統合失調症脆弱性形成の有力な説として,神経発達障害仮説が考えられている。神経発達障害には,環境要因と遺伝要因の両方が関わることが知られているが,特に環境要因については妊婦の栄養不良,妊婦のウィルス感染,産科合併症・周産期障害,母子間のRh血液型不適合などの関与が想定されている。本稿では母体栄養が出生後の児に及ぼす統合失調症脆弱性形成に対する影響について, DOHaD(Developmental Origins of Health and Disease)仮説の視点から概説したい。
  • 鵜飼 渉, 小野 貴文, 橋本 恵理, 金田 博雄, 白坂 知彦, 五十嵐 健史, 木川 昌康, 渡邊 公彦, 吉永 敏弘, 石井 貴男, ...
    2012 年 23 巻 2 号 p. 109-114
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    胎生期に Poly I :Cを処置した統合失調症モデルラットを作成した。モデルラット群は,新奇物体探索試験における記憶・認知機能,社会相互作用試験における社会コミュニケーションの各機能に異常を示した。これに対し,モデル動物に神経幹細胞を経静脈的に移植した群では,その異常が正常対象群に近いレベルへ改善されることがわかった。また,モデルラットに移植した標識神経幹細胞は,1 ~ 6ヵ月以上の期間,前部帯状回,海馬,扁桃体を含む脳の諸領域に分布,生存し,移植3 ヵ月の脳内では,海馬および扁桃体でGAD陽性の細胞(GABAergic neuron)に分化・成熟していることを観察した。加えて,抗精神病薬のオランザピンを併用処置することで,移植細胞がより高率で脳に移行,生存する可能性が示唆された。これらの結果は,統合失調症や胎児性アルコールスペクトラム障害などの,胎児期~幼年期にかけての脳神経発達障害の病理と関係が深い精神疾患に対する新たな治療手段としての,“薬物+幹細胞移植”療法の可能性を示唆する所見であると考えている。
  • 新井 誠, 宮下 光弘, 市川 智恵, 菊池(二本松) 尚美, 楯林 義孝, 岡崎 祐士, 宮田 敏男, 糸川 昌成
    2012 年 23 巻 2 号 p. 115-120
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    カルボニルストレス性統合失調症の症例において,ペントシジン,ビタミンB6といった分子マーカーやグリオキサラーゼの遺伝子型は早期の診断と病態の把握に有用である。また,カルボニルスカベンジャーとして機能するピリドキサミン(活性型ビタミンB6)は,カルボニルストレス性の症例,グリオキサラーゼ遺伝子に希少変異をもつ症例の病態に根ざした治療薬として,また,顕在化の予防を目指した新たな介入法となることが期待される。本稿では,「カルボニルストレス」を軸としたトランスレーショナルリサーチの自験例を紹介し,統合失調症の治療・予防薬の創出に向けた将来的な展望についても述べた。
  • 中村 元昭
    2012 年 23 巻 2 号 p. 121-129
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    ニューロモデュレーションの語源は化学シナプス伝達様式における遅いシナプス伝達(神経修飾)に由来する。近年は臨床医学の治療技法としてもこの用語が用いられるが,本稿では生物学的精神科治療学における薬物療法以外のニューロモデュレーションの歴史を振り返り,世界における現在の動向を紹介しながら,将来の展望を探る。精神科医療におけるニューロモデュレーションを,①外因性・高侵襲性,②外因性・低侵襲性,③内因性の3種類に大別して考察した。低侵襲性はけいれん誘発も外科的手技も必要とせず,内因性は外部からの物理的刺激に依存しないことを意味する。それぞれの方法論の長所と短所を理解したうえで治療アルゴリズムの中に適切に配置することが重要である。精神科治療学の負の歴史を忘れずに神経科学と神経倫理を前提としたニューロモデュレーションの精神科臨床応用が重要であろうと思われる。
  • 鬼頭 伸輔
    2012 年 23 巻 2 号 p. 131-136
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation :TMS)は,非侵襲的に大脳皮質を刺激し,皮質や皮質下の興奮性を変化させる方法である。10 ~ 20Hz の高頻度刺激は皮質興奮性を増強し, 1Hzの低頻度刺激は皮質興奮性を抑制する。TMSによるうつ病治療では,左背外側前頭前野への高頻度刺激と右背外側前頭前野への低頻度刺激の2つの方法がある。うつ病患者では,背外側前頭前野の hypoactivityと梁下野や前頭葉眼窩野などの腹内側前頭前野のoveractivity があるとされる。著者らの研究は,TMSの治療効果が背外側前頭前野や腹内側前頭前野の脳血流量と相関していることを示唆し,右背外側前頭前野への低頻度刺激は,腹内側前頭前野のoveractivity に抑制的に作用し,左背外側前頭前野への高頻度刺激は,同部位の hypoactivity に亢進的に作用することにより,うつ病を改善させると考えられる。
  • 高野 晴成
    2012 年 23 巻 2 号 p. 137-142
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    陽電子放出断層撮像法(PET)は電気けいれん療法(ECT)や経頭蓋磁気刺激法(TMS)の作用機序の検討に用いられている。われわれはPETを用いてECTの全般性けいれん発作最中の脳血流を測定し,脳幹や間脳で特に有意な増加を示し,発作の全般化に関して中心脳の重要性を示唆した。また,発作後10分以降では前部帯状回,内側前頭部で低下し,視床で増加しており,これらの部位の重要性も示唆された。PETにより神経伝達機能をみた研究では,ECT の 1コース治療前後で,セロトニン1A受容体の結合能には変化はみられなかったが,ドーパミンD2受容体では前部帯状回の低下,セロトニン2受容体では皮質領域の広範な低下が示されている。また,急性のTMS刺激ではドーパミンの放出の増加が報告されているが,うつ病患者を対象とした1コースの治療前後では線条体のD2受容体結合能およびドーパミン生成能に変化はみられなかった。
  • 鵜飼 聡
    2012 年 23 巻 2 号 p. 143-147
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    TMSを用いてヒトの皮質機能を評価する方法の中から,神経伝達物質の機能との関連が比較的強く,精神疾患の病態の検討や薬効評価の予測などへの応用が期待されるものをとりあげて紹介した。Cortical silent period の後期成分は運動皮質内のGABA-Bを介した皮質内抑制機構を反映し,統合失調症の陰性症状との逆相関や抗精神病薬による違いが示されている。統合失調症での障害が多数報告されている運動皮質への2連発磁気刺激による短潜時皮質内抑制は,主に運動皮質のGABA-Aを介したGABA性介在ニューロンの機能を反映しており,GABA系の機能異常と関連した統合失調症の病態の検討での成果が期待される。Short-latency afferent inhibition は,主に中枢性のコリン系神経伝達の機能を反映しており,認知症の診断や薬効評価の予測などの臨床応用を目指した今後の検討が期待される。
  • 花島 律子
    2012 年 23 巻 2 号 p. 149-152
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    経頭蓋的磁気刺激法(transcranial magnetic stimulation :TMS)は,非侵襲的にヒトの大脳皮質を刺激することが可能であり,中枢神経の運動調節機能を評価するために有効な検査方法として広く活用されている。近年は,TMSを反復して与えることで,刺激後にも続く大脳皮質の興奮性変化を起こすことが知られ,この効果を神経疾患および精神疾患の治療法として使用できないか試みられている。反復経頭蓋的磁気刺激(rTMS)後に生じる興奮性変化の生理学的機序は,神経可塑性誘導によるものではないかと考えられている。本稿ではrTMSを治療法として確立するために重要な要因を考えるとともに,シャム刺激との二重盲検による大規模な比較試験の必要性にも触れ,rTMS のパ ーキンソン病への臨床応用の試みを紹介する。
  • 米田 博
    2012 年 23 巻 2 号 p. 153
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
  • 音羽 健司
    2012 年 23 巻 2 号 p. 154-155
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
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