抄録
カルボニルストレス性統合失調症の症例において,ペントシジン,ビタミンB6といった分子マーカーやグリオキサラーゼの遺伝子型は早期の診断と病態の把握に有用である。また,カルボニルスカベンジャーとして機能するピリドキサミン(活性型ビタミンB6)は,カルボニルストレス性の症例,グリオキサラーゼ遺伝子に希少変異をもつ症例の病態に根ざした治療薬として,また,顕在化の予防を目指した新たな介入法となることが期待される。本稿では,「カルボニルストレス」を軸としたトランスレーショナルリサーチの自験例を紹介し,統合失調症の治療・予防薬の創出に向けた将来的な展望についても述べた。