日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
生物科学が臨床精神医学にできること,できないこと
澤 明
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2014 年 25 巻 3 号 p. 127-129

詳細
抄録

21 世紀にはいり,基礎的な脳科学と臨床精神医学の橋渡しが現実可能なものとして真剣に議論されるようになってきた。一方生物科学は,実証主義的とされてきた DSM 操作的診断基準に疑義を投げかけ,新しい枠組みで精神科障害を考えることの必要性も示唆している。すなわち生物科学は,環境因子と遺伝背景,身体的要素をバランスよく考え合わせ,疾患と健常を対比的にとらえるというよりは,それぞれの個性をもった人間が心理的,社会的要因と複雑に絡み合ったときに陥る困難な障害,それも可塑性を残したものとして,精神科障害を考える。こうした生物科学が精神医学に教える基本原理は基礎から臨床の橋渡しにとって重要である。生物科学,脳科学で人間がすべて理解できるなどと単純に考えず,生物科学を,包括的人間理解に基づくよりよき臨床実践のためのツールの 1 つとして,利点と限界を十分にわきまえたうえで適用することが期待される。

著者関連情報
© 2014 日本生物学的精神医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top