イスラエルの Joseph Zohar 教授が企画したシンポジウム「精神疾患の治療法としての記憶操作」を担当した。残念ながら Joseph Zohar 教授は学会直前に身内の不幸があり参加できなかったが,エール大学の John Krystal 教授と共にシンポジウムを運営し実りある成果を得た。多くの精神疾患では,記憶の記銘・維持・再生ができないことだけでなく,「固定化された記憶」や「誤った記憶」などの症状が認められるが,このような記憶を中心とした認知機能を操作することは,精神疾患の新しい治療法を指し示すものである。不利益な記憶や認知機能を修正することは,現在では主として精神療法が主役を果たしているが,近い将来に向けてニューロフィードバックを含めた生物学的な手法が考えられている。本シンポジウムでは,薬物療法を中心にした記憶の操作方法とその治療的介入について議論された。