日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
ミトコンドリア Ca²⁺ シグナリングを標的とした新規気分安定薬開発の可能性
窪田─坂下 美恵加藤 忠史
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ジャーナル オープンアクセス

2016 年 27 巻 1 号 p. 33-39

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抄録

Mitochondrial permeability transition pore(mPTP)の構成要素であるシクロフィリン D(CypD)ノックアウトマウスと神経変性疾患モデルとの関連性をもとに,ミトコンドリア Ca²⁺ 取り込み能に注目した。ミトコンドリアはユニポーターを介して細胞質からCa²⁺ を取り込み,ミトコンドリア内Ca²⁺ は, Na⁺/Ca²⁺ 交換体,および mPTP 開口を介して排出される。これまでに,多くの神経変性疾患モデル動物では,CypD ノックアウトマウスとの掛け合わせにより,神経障害が改善されることが示されている。一方,多くの神経変性疾患モデルマウスでは,強制水泳や,尾懸垂試験において,無動時間の延長が示されている。これらの知見から,mPTP 開口阻害剤が,うつ症状改善等の新規気分安定薬の標的となりえることが示唆され,新たな奏効機序を持つ候補化合物探索の基礎になると考えられる。

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© 2016 日本生物学的精神医学会
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