抄録
近年,医学部出身の基礎医学研究者が著しく減少していることが問題となっている。東京大学では2002年からMD-PhDコースを,2008年からMD研究者育成プログラムを立ち上げ,医学部出身の基礎医学研究者を増やす試みを続けてきた。その結果,学部生の基礎医学研究への関心や,その研究のレベルは確実に高まりつつあるといえる。
現行の研修制度では学部時代に基礎医学研究に注力した学生のほとんどが初期研修を選択している。しかし,これらの研修医は研修終了後に基礎医学系大学院進学を目指している者が多く,このような臨床知に根ざした基礎医学研究を担う人材を着実に増やすには,多様化するキャリアパス間をよりスムーズに乗換えできる仕組みを整える必要がある。このような仕組みの整備には基礎医学系の教室だけの取り組みでは足らず,臨床も含めた医学部全体の協力によって,キャリアパスの見えやすさを促進する制度設計が必要である。