日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
27 巻, 3 号
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  • 尾崎 紀夫
    2016 年 27 巻 3 号 p. 105
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/24
    ジャーナル オープンアクセス
  • 梶井 靖
    2016 年 27 巻 3 号 p. 107-112
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/24
    ジャーナル オープンアクセス
    神経精神疾患のトランスレーショナル研究では,動物モデルは機能障害の特定の要素にフォーカスしながら,その要素に関して分子から表現型に至る階層構造において妥当性を持つこと,すなわち,多層構造モデルとして着目する機能障害を議論できることが求められている。統合失調症の認知機能障害を特徴付けるcognitive capacity の1 つが思考柔軟性であり,実験的にはカテゴリー変更への対応を評価するExtra-dimensional(ED)set shifting の成績に反映され,ヒトではWisconsin Card Sorting Test が汎用されるが,げっ歯類においても同様に3 つのカテゴリーのキューに基づいてエサのある容器を選択する実験系が確立されており,ED set shifting を多層構造モデルとして解析可能である。認知症の初期から認められ,進行に伴って悪化するcognitive capacity として注目される対連合学習についても,スキーマ依存的地図学習系を用いることでヒト─げっ歯類間の多層構造モデルとしてのアプローチが実現されている。
  • 松本 惇平, 小野 武年, 西条 寿夫
    2016 年 27 巻 3 号 p. 113-116
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/24
    ジャーナル オープンアクセス
    トランスレーショナル研究では,動物の認知機能・行動を的確に評価するシステムが必須である。マウスを用いた系では,神経細胞(バルバルブミン陽性ニューロン密度)─神経生理学的指標(同期性γオシレーション)─認知・行動機能(プレパルス抑制)間の連関を同一マウスで解析し,同期性γオシレーションを,バルバルブミン陽性ニューロンが障害される精神疾患のバイオマーカーとして用いることができる可能性が示唆された。第二に,3 次元ビデオを用いた行動解析システムを開発し,動物の3 次元的な姿勢・位置を客観的かつより正確に解析することが可能になった。本稿ではこのシステムをラットの新奇物体探索課題およびサルの自発行動の解析に応用した研究を紹介する。以上のような新しい計測手法の開発により,客観的データにもとづいたトランスレーショナル研究が進展することが期待される。
  • 太田 深秀
    2016 年 27 巻 3 号 p. 117-123
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/24
    ジャーナル オープンアクセス
    トランスレーショナルリサーチとは研究室で得られた疾患メカニズムなどの知見を,診断・治療・予防の新技術へと発展させ,ヒトにおける試験につなげる研究をさす。これには前臨床的な研究で用いられた手段や対象となるバイオマーカーと同じものが臨床でも応用できることが望ましい。逆に,ヒトでみつかっている精神障害の中間表現型が動物においても確認できれば,モデル動物を用いた疾患研究や創薬の分野において非常に有効であるといえる。これらの点において臨床と同じバイオマーカーで動物も評価できる核磁気共鳴画像法(magnetic resonance imaging;MRI)の検査装置を用いた種々の撮影方法や陽電子断層撮像法(positron emission tomography;PET)などの脳画像情報はトランスレーショナルな手法として有用であるといえる。このように,ヒトと動物両方みられるような精神疾患の中間表現型の候補となりえそうなイメージング手法を,実際に行なわれた研究にそって紹介する。
  • 福田 正人
    2016 年 27 巻 3 号 p. 124
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/24
    ジャーナル オープンアクセス
  • 中村 由嘉子, 尾崎 紀夫
    2016 年 27 巻 3 号 p. 125-129
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/24
    ジャーナル オープンアクセス
    当事者が疾病とその治療について,医療者の意図を理解し,納得していることによって,治療はより有用で円滑なものとなる。うつ病の治療においても,良好な当事者・治療者関係を形成したうえで,「うつ病とはどのような病気か」「どのような治療が必要か」を伝え,当事者が治療上好ましい対処行動をとることを促すことが必要である。そのうえで,「うつ病とは何か」を伝えるが,患者自身が納得しやすいうつ病の疾病モデルを呈示して,治療への共通理解につなげることが重要である。 我々は,妊産婦を対象とした前向きコホート研究を実施し,抑うつ的になった結果,否定的認知の出現(治療により消退する),過去の養育体験の捉え方の変化(特に母親のケアを干渉と捉えるようになる),児への愛着の低下等が生じることを確認している。 以上を踏まえ本稿では,うつ病を説明する際,研究成果にもとづいてどのように説明するかについて論じる。
  • 鈴木 道雄
    2016 年 27 巻 3 号 p. 130-133
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/24
    ジャーナル オープンアクセス
    研究者には,心から研究の発展を望んでいる当事者や家族と,研究成果を適宜共有して行くことが求められる。そのためには,時間を惜しまず,わかりやすい説明に努めることが肝要である。筆者が重要と考えていることは,①研究の目的を十分説明する,②疾患の研究全体におけるその研究の位置づけを明確にする,③専門用語の使い方に注意する,④研究結果の臨床的な意義,さらには当事者や家族の生活における意義について,誤解を生まないようにわかりやすく説明する,⑤感想や意見を傾聴し,疑問にできるだけ答える,ことなどである。筆者の経験では,家族は一般に,私たちが予想する以上に的確に内容を理解していることが多い。また,やや偏った捉え方であっても,当事者や家族の意見は重く,それによって私たちの眼が開かれることも少なくないので,研究成果を共有することは,研究者にとって非常に貴重な機会となるであろう。
  • 岡崎 祐士
    2016 年 27 巻 3 号 p. 135-137
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/24
    ジャーナル オープンアクセス
    臨床研究は当事者・家族の協力を得て行われることが多いが,その研究成果が当事者・家族に報告され,共有されることは現状では極めて少ない。研究者の発見の成果は,雑誌に公刊されなければ確認されないという仕組みが,研究成果の公表を巡って政治的な事態を惹起することがある。また,大学や研究所の独立行政法人化に伴う,研究成果の要請が強まったことも公表を巡ってさらに複雑な事態を生じている。例えば,発表の前に特許等を申請し,研究方法や結果を守るために発表を遅らせたりするという動きである。しかし,研究者が当事者や家族を研究のパートナーとして認識していないという問題が最も基本的な問題である。 そのような問題を改善していくには,研究者が当事者・家族を研究の同志とする見方を確立することが第一に必要である。その上で研究者の発見を迅速に保護する仕組みの創成や,研究所や大学には,当事者・家族などを研究パートナーとして,研究者と協働していく常設部署の設置などが有効と思われる。
  • 黒川 常治
    2016 年 27 巻 3 号 p. 138-142
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/24
    ジャーナル オープンアクセス
  • 島本 禎子
    2016 年 27 巻 3 号 p. 143-145
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/24
    ジャーナル オープンアクセス
  • 菅谷 佑樹
    2016 年 27 巻 3 号 p. 147-150
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/24
    ジャーナル オープンアクセス
    近年,医学部出身の基礎医学研究者が著しく減少していることが問題となっている。東京大学では2002年からMD-PhDコースを,2008年からMD研究者育成プログラムを立ち上げ,医学部出身の基礎医学研究者を増やす試みを続けてきた。その結果,学部生の基礎医学研究への関心や,その研究のレベルは確実に高まりつつあるといえる。 現行の研修制度では学部時代に基礎医学研究に注力した学生のほとんどが初期研修を選択している。しかし,これらの研修医は研修終了後に基礎医学系大学院進学を目指している者が多く,このような臨床知に根ざした基礎医学研究を担う人材を着実に増やすには,多様化するキャリアパス間をよりスムーズに乗換えできる仕組みを整える必要がある。このような仕組みの整備には基礎医学系の教室だけの取り組みでは足らず,臨床も含めた医学部全体の協力によって,キャリアパスの見えやすさを促進する制度設計が必要である。
  • 加藤 隆弘
    2016 年 27 巻 3 号 p. 151-157
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/24
    ジャーナル オープンアクセス
    精神医学研究において,精神病理学や精神分析学を含む心の研究は,生物学的研究(脳の研究)とは対極に位置すると思われがちである。筆者は,幸か不幸か,所属している大学病院精神科医局の中で精神分析と生物学的研究という両方の世界に割と深く身を置いてきた。こうした二足の草鞋を履くという経験を元に,現在では,両者は相補的な関係にあると考えており,例えば,精神分析理論の重要概念である無意識的欲動(「生の欲動」や「死の欲動」)の起源はミクログリアをはじめとした脳内免疫細胞ではないか?とさえ考えるようになっている。筆者の研究室(九大精神科分子細胞研究グループ)では,脳と心のギャップを橋渡しするためのトランスレーショナル研究システムを試行錯誤しながら萌芽的に立ち上げてきた。本稿では,特に若手精神科医向けに,こうした研究に着手するようになるまでの一端を紹介する。筆者としては,二足の草鞋を履き続けたことによるメリットを実感しているため,生物学的精神医学を志す精神科医にも精神分析的な素養を少しでも身につけていただければと願っている。
  • 久島 周
    2016 年 27 巻 3 号 p. 158-162
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/24
    ジャーナル オープンアクセス
    近年のゲノム解析技術の進展と解析サンプル数の大規模化を背景に,統合失調症,自閉スペクトラム症,双極性障害を含む精神疾患の発症リスクを高めるゲノム変異が多数同定されつつある。その結果,①各精神疾患の発症には多数の異なるゲノム変異が関与していること(遺伝的異質性),②精神疾患の発症を高めるゲノム変異は,複数の精神疾患の発症に関与することが多く(多面発現的効果),健常者でもみられることが多いこと(不完全浸透),が明らかになった。さらに,③進化的に新しい稀な変異(de novo変異を含む)の重要性や,④ニューロンの体細胞変異の病態への関与,について注目が高まっている。症候学にもとづいて定義される精神疾患をゲノム変異の観点から捉え直すことで臨床・基礎研究も影響を受けつつある。ゲノムコホート研究,モデル動物研究,人工多能性幹細胞を用いた研究を例として述べる。
  • 新井 誠, 宮下 光弘, 小堀 晶子, 井上 智子, 堀内 泰江, 鳥海 和也, 内田 美樹, 畠山 幸子, 小幡 菜々子, 野原 泉, 糸 ...
    2016 年 27 巻 3 号 p. 163-167
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/24
    ジャーナル オープンアクセス
    症例研究は,精神科医療において科学的根拠が求められる病因や病態究明のための鍵であり,臨床還元を実践するための知恵となる。基礎研究の成果を臨床の場で実証していくための研究である橋渡し研究は,比較的早い段階で臨床における有効性を確認し,速やかに患者に革新的な新薬を届けることとされる。こうした精神科医療における研究には,基礎研究者,精神科医師,臨床心理士,看護師,精神保健福祉士など,様々な異分野の「知」と「技」が自由に共有できる体制を構築することが重要である。本稿では,臨床研究と基礎研究の双方に携わる著者らが経験したトランスレーショナルリサーチの取り組みについていくつかの視点から述べた。
  • 林─高木 朗子
    2016 年 27 巻 3 号 p. 168-169
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/24
    ジャーナル オープンアクセス
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