日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
精神疾患のゲノム解析の現状と展望
久島 周
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ジャーナル オープンアクセス

2016 年 27 巻 3 号 p. 158-162

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抄録
近年のゲノム解析技術の進展と解析サンプル数の大規模化を背景に,統合失調症,自閉スペクトラム症,双極性障害を含む精神疾患の発症リスクを高めるゲノム変異が多数同定されつつある。その結果,①各精神疾患の発症には多数の異なるゲノム変異が関与していること(遺伝的異質性),②精神疾患の発症を高めるゲノム変異は,複数の精神疾患の発症に関与することが多く(多面発現的効果),健常者でもみられることが多いこと(不完全浸透),が明らかになった。さらに,③進化的に新しい稀な変異(de novo変異を含む)の重要性や,④ニューロンの体細胞変異の病態への関与,について注目が高まっている。症候学にもとづいて定義される精神疾患をゲノム変異の観点から捉え直すことで臨床・基礎研究も影響を受けつつある。ゲノムコホート研究,モデル動物研究,人工多能性幹細胞を用いた研究を例として述べる。
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© 2016 日本生物学的精神医学会
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