抄録
活動依存的シナプス可塑性は学習・記憶の細胞基盤として広く受け入れられている。シナプス可塑性には入力特異性という局所的な性質を持つが,細胞全体での現象つまり可塑性関連物質の新規合成のかかわっている長期可塑性では如何にして入力特異性を担保しているかは謎であった。そのような中,シナプスタグ仮説が提唱されタンパク質合成依存的長期可塑性の理解においてのブレイクスルーとなった。シナプス入力によって入力特異的にシナプスに印「シナプスタグ」が形成され,そのシナプスタグと新規合成可塑性関連物質が相互作用することで長期可塑性が誘導され,入力特異性が担保されるという仮説である。この仮説はシナプスのみならず行動レベルまで観察されるようになった。今回,シナプス可塑性関連プロテアーゼ・ニューロプシンがシナプスタグ形成および行動タグ形成にかかわることを解説する。