抄録
統合失調症は,主に思春期・青年期に発症し,幻覚・妄想などの陽性症状,意欲低下・感情鈍麻などの陰性症状,認知機能障害などが認められ,多くは慢性・再発性の経過をたどり,社会的機能の低下を生じる精神障害である。統合失調症は家族集積性が高く,その遺伝要因に着目したゲノム研究がなされ,大規模サンプルによるGWASによって,108ものリスク座位の同定に成功し,これらの遺伝子に基づいた創薬が期待されている。また,脳神経画像解析や神経生理研究の進歩も目覚ましく,特に眼球運動は客観的補助診断法へ期待できる。さらに,認知機能障害については測定法が確立し,その障害の有無によって,治療法も変わることから,すでに客観的な診断法として確立したともいえる。このように診断法については中間表現型を中心に進んでいるが,治療法の開発については,分子/遺伝子が必要であり,トランスレーショナルなアプローチが期待される。