抄録
心的外傷後ストレス障害(Post-Traumatic Stress Disorder:PTSD)は,「死」のトラウマ体験(虐待・震災被害等)を契機に,侵入,回避,麻痺,覚醒亢進症状が存在する強度の抑うつ気分を伴う精神障害である。特に児童思春期のPTSDは,まとまりない興奮した行動を認め苦悩し,慢性的な困難を持つ。
一方,PTSD症状とN-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体によるグルタミン酸神経伝達が関係することが示唆され,その作用を持つ薬剤がPTSDの新たな治療薬として期待されている。イフェンプロジル酒石酸塩は,我が国とフランスにおいて脳梗塞後遺症,脳出血 後遺症に伴うめまいの改善薬としてすでに臨床使用されており,我々はイフェンプロジル酒石酸塩が,児童思春期PTSD症状を改善した報告をし,PTSDの新しい治療薬としての可能性があると考えている。我々は思春期(13〜18歳)のPTSD患児40名に対しイフェンプロジル酒石酸塩のプラセボ対照二重盲検比較試験を実施しており,本稿ではその概要を報告する