日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
統合失調症における細胞内ドパミンD2受容体の役割と創薬への可能性
福永 浩司塩田 倫史
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2018 年 29 巻 2 号 p. 78-82

詳細
抄録
私たちはドパミンD2受容体の細胞内第3ループに結合する分子として脂肪酸結合蛋白質3(FABP3)とRabex-5を同定した。FABP3欠損マウスではD2受容体阻害薬で誘発されるカタレプシーが亢進し,認知機能,多動症,恐怖記憶消去などの障害がみられ,PTSD様の症状が観察された。このFABP3欠損マウスにみられるPTSD様の行動障害はメラトニン受容体作用薬であるラメルテオンにより改善された。次にドパミン刺激はRabex-5を介してPDGFβ受容体を活性化すると同時に,D2受容体はPDGFβ受容体と一緒に細胞内に移動して初期エンドソームとゴルジ装置に局在した。これらの細胞内小器官ではGiα3を介してERKシグナルを活性化した。このように今回見いだした細胞内D2受容体シグナルはRabex-5/PDGFβ受容体を介してERKシグナルを活性化して,線条体中型有棘神経細胞(MSNs)のスパイン形成と神経活動を調節している。
著者関連情報
© 2018 日本生物学的精神医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top