日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
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情動制御におけるオピオイドδ受容体の役割と創薬への可能性
斎藤 顕宜山田 光彦
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ジャーナル オープンアクセス

2018 年 29 巻 2 号 p. 73-77

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抄録

オピオイドδ(DOP)受容体は情動神経回路にかかわる脳部位に多数分布しており,情動制御に重要な役割を果たしていることが示唆されている。現在までに,多数のDOP作動薬が開発され,抗うつ様作用あるいは抗不安様作用の検討がなされた。しかし,これまでに開発されてきた化合物の多くが痙れん誘発作用を示したため,その後の研究開発は大きく制限されている。一方,我々はDOP作動薬KNT-127が痙れん誘発作用を示さないことを見いだし,KNT-127をリード化合物とした向精神薬開発を進めてきた。実験動物を用いた行動薬理学モデルの検討から,DOP作動薬KNT-127は,ベンゾジアゼピン系抗不安薬や選択的セロトニン再取り込み阻害薬といった既存薬のもつ有害作用を示すことなく,優れた抗うつ様作用あるいは抗不安様作用を示す知見が得られている。本総説では,DOPをターゲットとした新規向精神薬の創薬への可能性について紹介したい。

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© 2018 日本生物学的精神医学会
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