日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
マウスにおける自閉スペクトラム発現の行動指標
掛山 正心ベナー 聖子藤原 昌也
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ジャーナル オープンアクセス

2018 年 29 巻 3 号 p. 103-108

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抄録
自閉スペクトラム関連症状を想定してマウス実験で広く用いられている行動テストを概観し,また我々の新たな行動テストについても触れながら,マウスの行動表現型や行動指標が精神医学上,果たしてヒトに外挿できるかどうかについて考察する。これまで,社会的コミュニケーションと社会的相互作用の障害に相当する行動テストとしてはソーシャル・インタラクションテストや超音波発声の多寡が用いられてきた。興味の限局と反復行動については常同運動や反復的毛づくろい行動の頻度,そしてT迷路やモリス水迷路による逆転課題等が一般的である。しかしこれらは,必ずしも研究室間や研究室内で再現性が確保されているわけではないことも指摘がなされつつある。我々は最近,マウスの意識レベルでの行動柔軟性を定量化する行動テスト,競争状態でマウスがみせる行動パターンを定量化する行動テストを開発した。そもそもマウスは,ヒトASD症状で問題となるような高度な社会性行動を発揮しうるのか,そして興味の限局・こだわりの強さといった意識レベルの柔軟性を持ち合わせているのかを考察し,マウスモデルとマウス行動指標の意味を議論する。
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© 2018 日本生物学的精神医学会
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