抄録
まれな変異とは,一般的にはその頻度が1%未満の変異を指し,その中に精神疾患の発症や病態に関連するものがあるだろうと考えて研究を行っている。しかし,そのような有害な変異が,なぜヒト集団に存在するのだろうか。本稿ではまず,分子生物学と分子進化学による説明と最近の大規模ゲノム解析のデータを見ながら議論する。また,有害とはどういうことか,どのように調べるのかについて解説し,筆者らが行った双極性障害におけるPOLG(ミトコンドリアDNA合成酵素)遺伝子のまれな変異についての研究を紹介する。相異なる3種類の方法(in vitro,in silico,in vivo)で有害度を解析したところ,いずれでも患者では有害な変異が有意に多く,POLGの有害変異が双極性障害の発症に関連していることが示唆された。