抄録
幻聴や思考障害は統合失調症の主要症状であり,これらの症状は,さまざまな日常生活上の行動だけでなく,社会的なコミュニケーションの神経基盤にも深刻な影響を与える可能性がある。例えば,幻聴が出現し,その内容が非常に悲観的な内容で,幻聴を現実の会話と区別できず,現実だと誤認したとすれば,幻聴に左右され,日常生活に重大な影響を与える可能性がある。しかし,幻聴出現時に,このような日常会話における社会的コミュニケーションがどのように障害され,そのとき脳機能がどのように変化しているかについては,まだ十分検証されていない。本稿では,近年の機能的MRIを用いた研究報告をふまえ,幻聴発生時の脳内神経基盤の変化について我々の知見を紹介し,主に音声プロソディー認知障害の観点から幻聴メカニズムと脳機能障害の関連について考察する。