抄録
快・不快情動の生成において,痛みと鎮痛の生体システムは根源的なメカニズムの1つであると考えられる。鎮痛システムには,オピオイド受容体が重要な役割を果たし,オピオイド受容体作動薬は強い鎮痛薬として医療上重要であると同時に,快情動を引き起こす依存性物質としての側面も併せもつ。オピオイド受容体を介したシグナル伝達の下流のエフェクターの1つであるGタンパク質活性型内向き整流性カリウム(GIRK)チャネルも,鎮痛と依存の両方にかかわっている。さらに,オピオイド鎮痛のゲノムワイド関連解析の結果,サイクリックAMP応答配列結合タンパク質(CREB)遺伝子の多型は,鎮痛のみならず物質依存症患者における依存重症度とも関連していた。本稿では,快・不快情動と疼痛制御にかかわる分子群について紹介したい。