日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
31 巻, 2 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 久住 一郎
    2020 年 31 巻 2 号 p. 55
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル オープンアクセス
  • 小崎 芳彦, 西澤 大輔, 池田 和隆
    2020 年 31 巻 2 号 p. 56-61
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル オープンアクセス
    快・不快情動の生成において,痛みと鎮痛の生体システムは根源的なメカニズムの1つであると考えられる。鎮痛システムには,オピオイド受容体が重要な役割を果たし,オピオイド受容体作動薬は強い鎮痛薬として医療上重要であると同時に,快情動を引き起こす依存性物質としての側面も併せもつ。オピオイド受容体を介したシグナル伝達の下流のエフェクターの1つであるGタンパク質活性型内向き整流性カリウム(GIRK)チャネルも,鎮痛と依存の両方にかかわっている。さらに,オピオイド鎮痛のゲノムワイド関連解析の結果,サイクリックAMP応答配列結合タンパク質(CREB)遺伝子の多型は,鎮痛のみならず物質依存症患者における依存重症度とも関連していた。本稿では,快・不快情動と疼痛制御にかかわる分子群について紹介したい。
  • 加藤 総夫
    2020 年 31 巻 2 号 p. 62-64
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル オープンアクセス
    痛みはなぜ苦しいのか? この問題に答えるためのさまざまな脳科学的なアプローチがこの15年ほどの間に進められてきた。急性痛や慢性痛に伴って活性化する脳部位は痛みネットワークを構成し,さまざまな活性化パターンや可塑性を示す。「痛み」の状態に応じて身体の反応性を制御することにより,行動を最適化して生存可能性を増加させることが痛み情動の機能である可能性を紹介する。
  • 吉野 敦雄, 岡本 泰昌, 山脇 成人
    2020 年 31 巻 2 号 p. 66-70
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル オープンアクセス
    痛み体験は情動の影響を大きく受ける。そのメカニズムについて臨床データや脳画像データを用いたこれまでの研究を概括する。具体的には①情動が痛みに与える影響,②メカニズム探求としての手綱核の可能性,③認知行動療法の治療効果における情動の重要性,の3つに絞って説明する。
  • 野村 淳, 内匠 透
    2020 年 31 巻 2 号 p. 71-75
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル オープンアクセス
    社会性行動の障害をコアドメインとする『自閉スペクトラム症(自閉症)』は,コア症状に付随する表現型が多岐に及ぶ神経発達障害である。名称に含まれる『スペクトラム』とは,境界が曖昧でありかつ連続体という意味であり,自閉症疾患表現型の多彩さ,複雑さを意味している。既に複数のヒト死後脳,モデル動物脳を用いた解析から自閉症に共通して変動する遺伝子,パスウェイ,ネットワークの同定が進んでいるが,これら臓器レベルの解析結果は多数の細胞種の影響を受けやすく,マイナーな細胞種の表現型はマスクされる傾向にある。これを解決したのが次世代シークエンスを用いた一細胞RNAシークエンス(scRNA‐seq)である。本技術は,一細胞レベルの解析を可能にしたことで,マイナーな細胞群での転写産物解析のみならず,メジャーな細胞も発現様式に応じて細かく分類し,解析を行う事が可能となった。本稿ではscRNA‐seqを用いた最新の研究結果の紹介,そして本技術を用いた自閉症研究の展望を行う。
  • 松﨑 秀夫
    2020 年 31 巻 2 号 p. 76-79
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル オープンアクセス
    近年の自閉スペクトラム症研究では,特有の酸化ストレス所見,あるいはその変化を示唆する生体中のエネルギー代謝所見が提示され,臨床応用が検討されてきた。これまでの研究成果によれば,酸化ストレス所見には自閉スペクトラム症の診療標的としての可能性がある。筆者のグループでも,臨床研究法に基づき,ミトコンドリアの機能を高めるアミノ酸の効果を確認する臨床試験を進めているが,自閉スペクトラム症の表現型の神経基盤はいまだ不明であり,酸化ストレスやミトコンドリア機能と自閉スペクトラム症の関連を問うアプローチでメカニズムの解明を目指す試みは,まだ緒に就いたばかりである。自閉スペクトラム症と酸化ストレスの関連を問う介入研究は,今後の自閉スペクトラム症の解明や診療手段開発において,ますます重要な位置を占めるものと推測される。
  • 牧之段 学, 小森 崇史, 岸本 年史
    2020 年 31 巻 2 号 p. 80-84
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル オープンアクセス
    自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder:ASD)には注意欠如多動症(attention deficit hyperactivity disorder:ADHD)や心的外傷後ストレス障害(post traumatic stress disorder:PTSD)が高頻度に併存するが,その原因となる分子病理は不明である。ADHD症状やPTSD症状は小児期体験の不良さと相関し,一方,ASD者の小児期体験は定型発達者よりも不良である場合が多いため,ASD者において高頻度で併存するADHDやPTSDの症状形成には小児期体験の不良さが関与しているかもしれない。本稿では,セロトニントランスポーター遺伝子SLC6A4に焦点を当て,ASD者の小児期体験とADHD症状およびPTSD症状との関係について考察する。
  • 山末 英典
    2020 年 31 巻 2 号 p. 85-89
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル オープンアクセス
    オキシトシンによって,現在は治療が困難な自閉スペクトラム症の中核症状が治療できるようになることが期待されている。しかし,これまでの報告を概観すると,単回投与では一貫して改善効果を報告してきた一方で,反復投与では,改善の有無についての結果が食い違っていた。その理由として,オキシトシンは反復投与すると効果の強さが変化することも疑われたが,これまでは自閉スペクトラム症の中核症状を繰り返して評価できるような客観的な方法がなかったため,この疑問を確かめることができなかった。この疑問に対して筆者らは,脳機能から生化学的検討まで含んだマルチモダリティの脳画像解析や定量的表情分析を評価項目に応用して行った自主臨床試験の解析結果を示し,さらに動物実験による検証を行い,反復投与による改善効果の経時変化や反復投与に特異的な効果発現メカニズムを示してきた。本稿では,これらの研究成果について概説する。
  • 内田 周作
    2020 年 31 巻 2 号 p. 90-92
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル オープンアクセス
  • 佐々木 哲也, 武井 陽介
    2020 年 31 巻 2 号 p. 93-97
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル オープンアクセス
    ミオシンはアクチンと結合する分子モーターである。ミオシンIdは自閉スペクトラム症のリスク遺伝子であり,神経細胞での局在や機能は不明である。培養神経細胞にEGFP融合ミオシンIdを発現させたところ,樹状突起スパインに集積が認められ,この局在にはTH1ドメインが重要であることが判明した。本研究結果は,自閉スペクトラム症発現・病態における本分子の役割を理解する最初の手がかりを与えると考えられる。
  • 権田 裕子, 花嶋 かりな
    2020 年 31 巻 2 号 p. 98-105
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル オープンアクセス
    大脳皮質は脳の高次機能において中心的な役割を果たし,その層構造や神経回路形成不全はさまざまな発達障害・精神疾患を引き起こす。近年の研究により,軸索ガイダンス分子として知られるRobo1が大脳皮質の神経回路形成においても重要な機能を担うことが示唆されてきた。私たちは,発生期大脳皮質の第2/3層錐体細胞においてRobo1発現を抑制すると,神経細胞移動障害ならびに配置異常と形態異常を引き起こし,Robo1が大脳皮質錐体細胞の最終配置決定と層形成,尖端樹状突起の形態形成に重要な分子であることを明らかにした。本稿ではRobo1研究について最新の知見を紹介しながら,Robo1を介した大脳皮質神経回路形成機構について考察したい。
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