社会や環境から受けるストレスは精神疾患のリスク因子であり,げっ歯類のストレスモデルを用い,ストレスによる行動変化における分子機序の解明が進められている。急性および慢性ストレスによる内側前頭前皮質(mPFC)の機能変化を分子レベルで解析し,その結果生じる行動変化を調べた。急性ストレスは中脳皮質ドーパミン系および興奮性神経細胞のD1受容体を活性化しストレスによる社会忌避行動の誘導を抑制する。一方,反復ストレスはCOX‐1‐PGE2‐EP1経路を介して中脳皮質ドーパミン系を抑制し,社会忌避行動を誘導する。さらに,慢性ストレスはToll様受容体の活性化を介してmPFCミクログリアを活性化し,活性化ミクログリアから放出される炎症性サイトカインIL‐1αおよびTNFαが社会忌避行動を誘導する。このように,慢性ストレスはミクログリアを起点とする脳内炎症を誘導し,ストレスによる行動変化を誘導する。