日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
社会経験の剥奪による内側前頭前野の興奮性/抑制性バランスの異常
芳野 浩樹
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ジャーナル オープンアクセス

2020 年 31 巻 4 号 p. 174-

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抄録

精神疾患の病因を考えるうえで,遺伝や発症前のストレスのみならず発達環境が重要であることが知られている。発達環境によって生じる病態の基盤となる神経回路の異常を明らかにするため,筆者らは発達期における社会的刺激の欠落がどのように脳の発達に影響するかに注目してきた。その中で,発達期に一匹で飼育されたマウスの前頭前野の神経細胞の電気的活動を調べ,特定の錐体細胞において興奮性シナプス入力が低下し,逆に抑制性のシナプス入力が増加していること,つまり興奮性/抑制性入力のバランスが抑制方向にシフトして錐体細胞の興奮性が低下することを明らかにした。今後はこの錐体細胞の脳全体における機能的位置づけに着目して,社会経験の剥奪の脳への影響のメカニズムについてさらなる解明を目指したい。

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© 2020 日本生物学的精神医学会
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