抄録
疫学研究を進めていくうえで,バイオバンクとコホート研究の質の向上および参加者(検体)数の拡充と,大規模な情報から目的の疾患に関連する要因を見つけだすための遺伝統計学手法の開発は車の両輪の関係にある。本稿では,疫学研究を推進していくためのバイオバンクとコホート研究の現状に触れ,さらに世界最大規模の出生三世代コホートなどを運用する東北メディカル・メガバンク計画の取り組みを紹介する。次いで,疾患関連解析の最大の難問とされる「失われた遺伝率」の問題について触れ,この問題の克服をめざした手法の一つとして,いわて東北メディカル・メガバンク機構で開発したiwate polygenic model(iPGM)を利用した脳梗塞発症リスク予測について述べる。最後に,コホート研究による精神疾患リスク予測に向けたアプローチについて触れる。