抄録
概日リズムは,行動や生理機能のみならず,がんや肥満,さらには精神状態にも関与するといわれる基本的生命現象である。多様な疾患が概日リズムの異常と関連していることが知られており,概日リズムを介した調整機構を理解することは,治療戦略への発展に大いに期待できると考えられる。近年,クロノタイプ(日周指向性)とうつ病などの気分障害との関連が示唆されており,朝型タイプではうつ病リスクの低下などのストレス抵抗性を示す可能性が報告されている。そのため,時間生物学的なアプローチから気分障害の分子病態を解明しようとする試みに注目が集まっている。本稿では,概日リズムを切り口に気分障害やストレスに対する影響について概説するとともに,筆者らの睡眠相前進を示す時計遺伝子変異マウスによる慢性ストレスレジリエンスについて紹介したい。