日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
精神現象の可視化:ガンマオシレーションを軸にした統合失調症の病態解明と治療
平野 羊嗣
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 33 巻 1 号 p. 26-34

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抄録
科学の長足の進歩にもかかわらず,現在の精神疾患の診断は,いわば症状の羅列に依拠しており,身体疾患のように明確に可視化できるようなバイオマーカーは依然として存在しない。ましてや,未だに謎の多い統合失調症に関してはなおさらである。一方で,近年の研究によって,統合失調症の病態基盤の背景に,脳内の律動的な活動であるニューラルオシレーションの中でもより高周波のγオシレーションの異常がかかわっているとする一貫した証左が得られている。このγオシレーションは,脳波や脳磁図で比較的簡便に測定可能で,刻々と変化する生体内の脳活動を高い時間分解能で可視化する際の指標として最適である。その生成メカニズムも基礎研究により解明されており,トランスレーショナルリサーチにも向いているとされる。つまりγオシレーションは,統合失調症の変化に富んだ異常な脳内現象や精神現象を可視化するには最適な機能的指標である。本稿ではγオシレーションを軸にした統合失調症の精神現象の可視化を通じて,いかにその病態解明に迫り,新規治療法開発へつなげるか,その戦略と課題を展望した。
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© 2022 日本生物学的精神医学会
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