抄録
統合失調症では,記憶,遂行(実行)機能,流暢性,注意,処理速度など認知機能の低下を認める。このような統合失調症の認知機能障害(cognitive impairmant of schizophrenia:CIS)は,動機づけや全般的な知的能力からは説明のできない特異的な能力低下であり,患者の機能的予後を大きく左右する。CISの改善に向けて薬物療法や心理社会的治療法などが試みられているが,それらの効果は限定的であり,副作用や人的資源の負担などの課題もある。こうしたなか,簡便かつ安全に実施可能な低侵襲脳刺激法である経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct current stimulation:tDCS)が注目されている。本稿ではtDCSの紹介およびCIS改善効果について述べる。