日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
33 巻, 2 号
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  • 中尾 智博
    2022 年 33 巻 2 号 p. 43-
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル オープンアクセス
  • 大隅 典子
    2022 年 33 巻 2 号 p. 44-47
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では,近年増加の一途をたどる自閉スペクトラム症などの神経発達障害の病因の理解のために,「精子の老化」に着目する。精子細胞は,生命の起源としてゲノムの半分を供給するだけでなく,DNAのメチル化,ヒストン修飾,マイクロRNAなどのエピジェネティックな変化(エピ変異)を持ち込むことによって付加的な情報を伝達しうる。実際,筆者らはマウスをモデルとして,父親の加齢に伴い生じる精子DNAの低メチル化が次世代の神経発生に影響する分子機構について明らかにした。精子に生じるエピジェネティックな変化(エピ変異)がどのように次世代の病気や障害を引き起こすのかについての理解は,神経発達障害の新たな治療法や予防法の開発に資するものである。
  • 野村 淳, 内匠 透
    2022 年 33 巻 2 号 p. 48-52
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル オープンアクセス
    生物学における一細胞レゾリューションの解析は「single‐cell RNA‐sequence(scRNA‐seq)」によるゲノムワイドな転写産物解析に始まり,「ATAC‐seq」によるクロマチン構造(アクセシビリティー)解析,「CITE‐seq」による細胞膜(表面)タンパク質の解析,組織切片を対象とした空間情報を保持した遺伝子発現解析,さらにこれらを応用した技術にまで拡がりをみせている。現在,3D脳オルガノイド等を組み合わせることにより多面的な解析が可能となり,導出された出力データの統合により生物学的理解は急速に進んでいる。実際,神経精神疾患分野においても複雑な疾患表現型を説明しうる細胞種特異的メカニズムが次々と提案されている。本稿では,神経精神系疾患におけるシングルセル解析の見地から,社会性の喪失をコアドメインとする自閉スペクトラム症(自閉症),そして呼吸器系疾患でありながら一部患者に神経精神疾患表現型が認められる新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)について,最新の知見を紹介する。
  • 山室 和彦
    2022 年 33 巻 2 号 p. 53-57
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル オープンアクセス
    幼少期の社会的孤立は成人期の社会性行動を低下させるが,その神経回路のメカニズムはよくわかっていない。本研究では離乳直後の2週間の社会的隔離により,新規マウス曝露時に後部視床室傍核に投射する内側前頭前野(mPFC→pPVT)投射錐体細胞の活性化が低下することを明らかにした。mPFC→pPVT神経回路の活動を光遺伝学的手法にて抑制すると社会性行動障害がみられた。幼若期の隔離によって,成体期でmPFC→pPVT投射錐体細胞の細胞興奮性が低下し,ソマトスタチン発現低閾値スパイクインターニューロンからの抑制性入力が増加するという社会性行動障害を引き起こす神経回路メカニズムを明らかにした。さらに,mPFC→pPVT神経回路を光遺伝学的に活性化することで,幼若期隔離による社会性行動障害を改善できることが示唆された。筆者らは,社会性行動に必要なmPFC→pPVT投射錐体細胞の細胞興奮性およびその関連する抑制性回路が幼若期の社会的経験によって大きく影響を受けることを明らかにした。
  • 古田島(村上) 浩子, 佐藤 敦志, 池田 和隆
    2022 年 33 巻 2 号 p. 58-62
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル オープンアクセス
    自閉スペクトラム症(以下,自閉症)は,対人相互関係やコミュニケーションの障害,繰り返し行動や限局的な興味を主な特徴とする神経発達障害である。患者をサポートするには,自閉症の特性への理解や対応スキルが必要であり,家族やサポートする周囲の人々においても対応が困難な疾患である。自閉症の発症は遺伝や環境要因,また双方の要因の交絡が関与すると考えられているが,現在のところ自閉症の病態解明や根治的な治療法の開発はされていない。本稿では自閉症を併発する遺伝性疾患の病態の一つであるmammalian/mechanistic target of rapamycin(mTOR)シグナル経路の亢進に焦点をあて,基礎研究,臨床研究,さらに臨床や教育現場において患者に実施されている療育について紹介し,議論する。合わせて著者らの研究室において見いだされた基礎研究の成果も紹介し,今後の自閉症研究の展望も述べる。
  • 山末 英典
    2022 年 33 巻 2 号 p. 63-66
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル オープンアクセス
    オキシトシンによって自閉スペクトラム症の中核症状が治療できるようになることが期待されている。しかし,単回投与ではこれまで一貫して改善効果が認められる一方,反復投与では報告が一貫しなかった。その理由として,オキシトシンを反復投与すると効果が変化することが疑われたが,自閉スペクトラム症の症状を繰り返して評価できるような客観的な方法がなく,この疑問を確かめることができなかった。筆者らの最近の研究では,対人場面に現れる表情を定量的に解析して評価項目とし,自閉スペクトラム症に関連した表情の特徴がオキシトシンの投与で改善されることについて再現性をもって示すことに成功した。さらにこの改善効果は時間とともに変化することを示し,この経時変化の脳内・分子メカニズムに関する知見とともに,オキシトシンによる自閉スペクトラム症の治療が最適化され開発が進むことが期待されている。本稿ではこの研究成果について概説した。
  • 鬼頭 伸輔
    2022 年 33 巻 2 号 p. 67-70
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル オープンアクセス
    うつ病は再燃・再発しやすい疾患であり,急性期治療に引き続く治療戦略が肝要となる。特に治療抵抗性うつ病では,再燃・再発を防ぐための連続・維持療法(以下,維持療法)の確立が喫緊の課題といえる。反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)は,非侵襲的に脳皮質を刺激し興奮性を修飾する技術であり,複数の臨床試験やメタ解析から治療抵抗性うつ病への有効性が実証されている。rTMS療法の長期効果に関するメタ解析では,急性期rTMS療法後の再燃・再発を防ぐための治療選択肢として,維持rTMS療法が有用であることが示されている。筆者のグループは,治療抵抗性うつ病患者に対して6週間の急性期rTMS療法を行い,寛解に至った2名に対して,12カ月間の維持rTMS療法を導入し,その有用性を報告した。最後に,現在準備を進めている維持rTMS療法の標準化および保険収載を目的とした多施設,前向き,非無作為化縦断研究の概要を紹介する。
  • 野田 賀大
    2022 年 33 巻 2 号 p. 71-76
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル オープンアクセス
    うつ病の病態生理の1つに神経可塑性仮説があるが,rTMS療法はまさに脳内ネットワークの神経可塑性を神経修飾することで治療効果を発揮する物理学的な治療法である。これまでの先行研究からは,rTMSの治療メカニズムには,分子レベルではGABA,NMDA,AMPA,BDNFなどが関与していることが示唆されており,神経画像レベルでは安静時機能的MRI計測によるDLPFCと膝下部前帯状皮質の機能的結合性,デフォルトモード・ネットワークやセントラル・エグゼクティブ・ネットワーク内の機能的結合性の強さ,左DLPFCと線条体間の機能的結合性の強さなどが関与しているとされ,神経化学的にはMRS計測による背側前帯状皮質におけるGABA濃度の変化などが関与していると言われている。本稿では,うつ病に対するrTMS療法の神経生物学的な治療メカニズムに関して,筆者がこれまでに行ってきたTMS研究の知見も交え,rTMS療法が今後めざすべき方向性や展望について考察する。
  • 垂水 良介, 中島 振一郎
    2022 年 33 巻 2 号 p. 77-81
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル オープンアクセス
    統合失調症(SZ)では,病態生理としてドパミン(DA)仮説が提唱され,この仮説に基づいて創薬がされてきた。約3割のSZ患者はDAD2受容体遮断薬に反応せず,治療抵抗性統合失調症(TRS)とされる。TRSの病態をDA仮説で説明するには限界があり,包括的な新しい仮説としてグルタミン酸(Glu)仮説が提唱されてきた。近年プロトン核磁気共鳴スペクトロスコピー(1H‐MRS)を用いて脳の局在でGlu系神経代謝物の濃度が異なることが報告されており,Glu神経系の異常が示唆されている。Glu仮説の観点からTRSの病態解明や新たな治療薬の開発が期待される。
  • 末吉 一貴, 住吉 太幹
    2022 年 33 巻 2 号 p. 82-86
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル オープンアクセス
    統合失調症では,記憶,遂行(実行)機能,流暢性,注意,処理速度など認知機能の低下を認める。このような統合失調症の認知機能障害(cognitive impairmant of schizophrenia:CIS)は,動機づけや全般的な知的能力からは説明のできない特異的な能力低下であり,患者の機能的予後を大きく左右する。CISの改善に向けて薬物療法や心理社会的治療法などが試みられているが,それらの効果は限定的であり,副作用や人的資源の負担などの課題もある。こうしたなか,簡便かつ安全に実施可能な低侵襲脳刺激法である経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct current stimulation:tDCS)が注目されている。本稿ではtDCSの紹介およびCIS改善効果について述べる。
  • 松本 純弥
    2022 年 33 巻 2 号 p. 87-89
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル オープンアクセス
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