日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
D1およびD2ドーパミン受容体を介する神経伝達による運動制御と学習記憶の仕組みの理解
齊藤 奈英板倉 誠田井中 一貴Tom Macpherson疋田 貴俊山口 瞬佐藤 朝子大久保 直知見 聡美南部 篤笹岡 俊邦
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2022 年 33 巻 3 号 p. 100-105

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抄録

ドーパミン(DA)作動性神経伝達は,運動制御,認知,動機付け,学習記憶など広範な役割を持つ。DAは大脳基底核回路において,D1受容体(D1R)を介して直接路を活性化し,D2受容体(D2R)を介して間接路を抑制する。さらに詳細にD1RおよびD2Rを介したDA作動性神経伝達を理解するため,筆者らは,D1R発現を薬物投与により可逆的に制御できるコンディショナルD1Rノックダウン(D1RcKD)マウスを作製した。このマウスを用いることにより,D1Rを介する神経伝達が,大脳基底核回路の直接路の情報の流れを維持し,運動を促進することを明らかにした。また,D1Rを介したDA伝達が少なくとも部分的に大脳皮質ネットワーク内の神経活動を増加させて嫌悪記憶形成を促進することを明らかにした。本稿では筆者らのこれまでの取り組みも交えD1RcKDマウスを用いた運動制御と嫌悪記憶形成に関する研究を中心に紹介する。

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© 2022 日本生物学的精神医学会
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