抄録
オランザピンなどの多元受容体標的化抗精神病薬は,副作用として体重増加や糖代謝異常を引き起こすことが知られる。また,血糖値のさらなる上昇が懸念されることから,オランザピンは糖尿病の既往がある患者には投与禁忌である。オランザピンなどの抗精神病薬による糖代謝異常は統合失調症の治療を進めるうえで大きな問題となるが,その発現機序には不明な点が多い。筆者らはこれまでオランザピンが中枢に作用し,交感神経の活性化を介して血糖値を上昇させることや,ドパミンD2受容体,ヒスタミンH1受容体ならびにα1アドレナリン受容体がその作用に関与することを示している。さらに,中枢のドパミンD2受容体は肝臓における糖産生を亢進することで血糖値を上昇させることを最近報告した。本稿では,オランザピンによる血糖上昇作用と中枢のドパミンD2受容体の役割について紹介する。