日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
33 巻, 3 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 池田 匡志
    2022 年33 巻3 号 p. 95-
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
  • 池田 弘子
    2022 年33 巻3 号 p. 96-99
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
    オランザピンなどの多元受容体標的化抗精神病薬は,副作用として体重増加や糖代謝異常を引き起こすことが知られる。また,血糖値のさらなる上昇が懸念されることから,オランザピンは糖尿病の既往がある患者には投与禁忌である。オランザピンなどの抗精神病薬による糖代謝異常は統合失調症の治療を進めるうえで大きな問題となるが,その発現機序には不明な点が多い。筆者らはこれまでオランザピンが中枢に作用し,交感神経の活性化を介して血糖値を上昇させることや,ドパミンD2受容体,ヒスタミンH1受容体ならびにα1アドレナリン受容体がその作用に関与することを示している。さらに,中枢のドパミンD2受容体は肝臓における糖産生を亢進することで血糖値を上昇させることを最近報告した。本稿では,オランザピンによる血糖上昇作用と中枢のドパミンD2受容体の役割について紹介する。
  • 齊藤 奈英, 板倉 誠, 田井中 一貴, Tom Macpherson, 疋田 貴俊, 山口 瞬, 佐藤 朝子, 大久保 直, 知見 聡美, ...
    2022 年33 巻3 号 p. 100-105
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
    ドーパミン(DA)作動性神経伝達は,運動制御,認知,動機付け,学習記憶など広範な役割を持つ。DAは大脳基底核回路において,D1受容体(D1R)を介して直接路を活性化し,D2受容体(D2R)を介して間接路を抑制する。さらに詳細にD1RおよびD2Rを介したDA作動性神経伝達を理解するため,筆者らは,D1R発現を薬物投与により可逆的に制御できるコンディショナルD1Rノックダウン(D1RcKD)マウスを作製した。このマウスを用いることにより,D1Rを介する神経伝達が,大脳基底核回路の直接路の情報の流れを維持し,運動を促進することを明らかにした。また,D1Rを介したDA伝達が少なくとも部分的に大脳皮質ネットワーク内の神経活動を増加させて嫌悪記憶形成を促進することを明らかにした。本稿では筆者らのこれまでの取り組みも交えD1RcKDマウスを用いた運動制御と嫌悪記憶形成に関する研究を中心に紹介する。
  • 岡田 元宏
    2022 年33 巻3 号 p. 106-111
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
    注意欠陥多動性障害(ADHD)は,疾病概念と診断基準の変更も加わり,有病率の増加が報告されている。治療薬もメチルフェニデートとアンフェタミンなどの刺激性治療薬に加え,アトモキセチンとグアンファシンなどの非刺激性治療薬も加わり,治療者側の選択肢が広がってきている。グアンファシンは他のADHD治療薬とは異なり,カテコラミントランスポーターに対する親和性がなく,α2Aアドレナリンに対する選択的作動薬という点で,明らかに異なる薬力学的プロファイルを有する治療薬である。しかし,グアンファシンの病態生理は,グルタミン酸伝達系に偏りカテコラミン伝達に対する効果は解明されているとは言い難い。本稿では,グアンファシンの急性局所投与と亜急性全身投与を行い,眼窩前頭野・青斑核・視床のノルエピネフリン伝達とグルタミン酸伝達機構の変化を紹介し,ADHDの病態生理を概説する。
  • 三枝 禎
    2022 年33 巻3 号 p. 112-116
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
    麻薬性鎮痛薬への精神依存の形成には中脳辺縁系ドパミン(DA)神経活動の亢進がかかわると考えられている。中脳辺縁系DA神経が投射する側坐核にはDA神経と相互作用をするGABA神経が認められる。本稿では無麻酔非拘束ラットを用いたin vivo脳微小透析実験で筆者らが得た知見に基づき,麻薬性鎮痛薬の作用点であるopioid受容体サブタイプのうち側坐核に分布するδおよびμ受容体の刺激による同部位のDA放出の促進へのGABA神経機構の関与について述べた。はじめにGABA受容体サブタイプのGABAAまたはGABAB受容体を介した内因性GABAによる側坐核のDA放出の抑制機構について考察した。側坐核にはδまたはμ受容体の発現したGABA神経が分布するため,δまたはμ受容体を介したDA放出の増加にはDA神経終末上のGABAAまたはGABAB受容体へのGABA入力の低下がかかわることが考えられる。このためδまたはμ受容体のサブタイプを介したDA放出の促進へGABAAまたはGABAB受容体ligandが及ぼす効果から,側坐核のδまたはμ受容体,GABA受容体,DA神経の相互作用についてモデルを用いて説明した。
  • 林 優, 加藤 秀一, 尾崎 紀夫
    2022 年33 巻3 号 p. 117-122
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
    精神疾患の当事者・ご家族は,病状に起因する不利益だけでなく,その成因について「家系」や「育て方」,すなわち親や自分自身にすべての責任を帰してしまう結果生じる苦悩にも苛まれている。また,精神疾患の病態に基づいた治療法は未だ開発されていない。こうした現状に対して,精神疾患のゲノム研究へ寄せられる期待は大きい。精神疾患のゲノム研究により,特定のゲノム情報により特定の精神疾患全般が説明されることはなく,その発症にはさまざまな要因が絡み合っていることが明らかにされてきた。また,精神疾患の診断や治療に直接役立てられる知見も得られつつある。こうした成果を精神科臨床に活かすための適切な遺伝カウンセリングが提供されるべく,精神科医のゲノム医療に関するリテラシー向上が必要である。さらに,当事者・ご家族の精神医学研究への切実な願いである,病態解明と病態に基づく創薬に向けた研究の遂行と,人材の育成が不可欠である。
  • 有岡 祐子, 奥村 啓樹
    2022 年33 巻3 号 p. 123-128
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
    精神疾患は,患者自身に多大な苦痛とQOL低下を引き起こすと同時に,膨大な社会的損失をもたらす。しかし,未だ精神疾患の病態解明には至っておらず,根本的な治療法開発は実現できていない。その理由のひとつとなっているのが,「精神疾患の病態メカニズムを解析・検証できる実験モデル確立の困難さ」である。この課題に立ち向かうべく注目されているのがiPS細胞である。精神疾患の病態解明研究にiPS細胞技術が取り入れられた当初を振り返ると,単に「健常者vs精神疾患患者」での比較を行った報告が主流であった。近年では,精神疾患発症のリスクゲノムバリアントに基づいたアプローチへと変化しつつある。本稿では,ゲノムとiPS細胞のコラボレーションによる筆者らの研究成果を紹介するとともに,iPS細胞のメリットとデメリット,そして精神疾患の病態解明と創薬におけるiPS細胞の可能性について述べる。
  • 石黒 浩毅
    2022 年33 巻3 号 p. 129-132
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
    精神疾患のゲノム解明が進むことにより,疾患への偏見回避や治療・予防法の革新が期待できる。一方でゲノム情報は個人やその血縁者などに発症の不安を与える可能性もあり,その取り扱いには精神科医療ならびに精神保健や支援が望まれる。遺伝子・染色体疾患患者の精神症状に対する小児期医療から成人期医療へのトランジション問題とコモンディジーズである精神疾患の遺伝相談について,精神科医に求められるリテラシーを概説する。
  • 堀内 泰江, 浄住 佳美, 浦上 研一, 山口 建, 糸川 昌成, 新井 誠
    2022 年33 巻3 号 p. 133-138
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
    次世代シークエンサーなどのゲノム解析技術の飛躍的な進歩により,複数の遺伝子変異を短時間で網羅的に解析することが可能となり,患者の遺伝子解析情報を医薬品の開発などの研究での活用や診断,治療法選択に活用するクリニカルシーケンシングの社会実装が急速に進んでいる。一方で,網羅的な全ゲノム解析は本来の目的とは異なる二次的な所見(secondary findings)の結果開示という新たな課題も生じ,その対応が議論されている。わが国においても,二次的所見ガイドラインが作成され,がんゲノムプロファイル検査などの生殖細胞系列遺伝子バリアントの開示がすでに臨床で実施されている。ゲノムの情報は,当事者だけでなく血縁者で共有するものであるため,被検者本人が疾患関連遺伝子バリアントを有する場合,その血縁者も同様に疾患発症リスクを持っている可能性を示すことになる。そのため,結果開示には結果を知るメリット・デメリット,知る権利,知らないでいる権利,双方を尊重した慎重な遺伝カウンセリングが必要となる。筆者らは,静岡県立静岡がんセンターで進められている臨床ゲノム研究(Project HOPE)において,これまでに約5,000症例のエクソーム解析を行い,二次的所見として検出されたガイドラインに基づく病的バリアントを研究参加者に返却するまでの院内連携・遺伝カウンセリングシステムを構築してきた。本稿では,筆者らが取り組んできた臨床ゲノム研究の実施経験から,患者への遺伝情報開示,遺伝カウンセリング,ゲノム研究成果の臨床還元の展望と課題について概説する。
  • 越山 太輔
    2022 年33 巻3 号 p. 139-141
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
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