日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
当事者・家族の期待に応えるゲノム研究とは
林 優加藤 秀一尾崎 紀夫
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2022 年 33 巻 3 号 p. 117-122

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抄録
精神疾患の当事者・ご家族は,病状に起因する不利益だけでなく,その成因について「家系」や「育て方」,すなわち親や自分自身にすべての責任を帰してしまう結果生じる苦悩にも苛まれている。また,精神疾患の病態に基づいた治療法は未だ開発されていない。こうした現状に対して,精神疾患のゲノム研究へ寄せられる期待は大きい。精神疾患のゲノム研究により,特定のゲノム情報により特定の精神疾患全般が説明されることはなく,その発症にはさまざまな要因が絡み合っていることが明らかにされてきた。また,精神疾患の診断や治療に直接役立てられる知見も得られつつある。こうした成果を精神科臨床に活かすための適切な遺伝カウンセリングが提供されるべく,精神科医のゲノム医療に関するリテラシー向上が必要である。さらに,当事者・ご家族の精神医学研究への切実な願いである,病態解明と病態に基づく創薬に向けた研究の遂行と,人材の育成が不可欠である。
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© 2022 日本生物学的精神医学会
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