抄録
本稿の前半では,統合失調症の発症に強く関与する大規模なゲノムコピー数バリアント(CNV)について概説する。個々のCNVの頻度は患者群でも1%以下と低いが,22q11.2欠失,3q29欠失,15q11‐q13重複など,発症リスクを10倍以上に高めるものもある。これらCNVは統合失調症だけでなく,知的能力障害,自閉スペクトラム症,注意欠如・多動症などのリスクにも関与し,疾患横断的なリスクバリアントといえる。後半では,筆者らがCNV解析から統合失調症との関連を見いだしたARHGAP10遺伝子に関して,モデル生物を用いた病態研究を紹介する。ARHGAP10バリアントに基づくモデルマウスと患者iPS細胞を用いた機能解析から,神経細胞レベルの発達異常や行動レベルの異常を見いだした。その背景にはARHGAP10遺伝子の機能低下によるRhoAやRhoキナーゼの異常な活性化が想定された。このシグナルを標的とした創薬の可能性についてもふれる。