2023 年 34 巻 4 号 p. 133-139
多くの精神疾患は,家系研究や双生児研究などから高い遺伝率が推測されている。しかし,臨床診断は問診によらざるを得ず,遺伝学的にも症候学的にも不均一な集団となる。筆者らは,疾患の均質化をめざし,ベッドサイドで遭遇した特徴的な身体表現型を有する器質性精神疾患などに着目して遺伝子解析を行ってきた。今回,「炭酸リチウムに良好な反応性を持つ双極性障害家系例」や「身体小奇形症候群を伴う統合失調症家系例」について遺伝子解析を行った。それぞれわずか1家系であったが,ポジショナルクローニング法によって,病因候補遺伝子を同定した。それぞれの遺伝子変異は非常に稀なものであったが,双極性障害や統合失調症の発症に大きな効果量を有する可能性を考えている。今後はこのような特徴を有する家系をさらに集積し,同定した候補遺伝子について各疾患の分子病態への機能的関与を明らかなものにしたい。