日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
ゲノム編集技術を用いた体細胞遺伝子操作
鈴木 啓一郎
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ジャーナル オープンアクセス

2023 年 34 巻 4 号 p. 165-170

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抄録

近年,CRISPR‐Casシステムの登場によりゲノムの標的遺伝子を操作する「ゲノム編集」技術が急速に進歩し,多種多様な細胞や生物種のゲノム配列を選択的に改変することが可能となった。しかしながら,標的配列を任意の配列に改変できる「相同組換え法」は,細胞周期に依存したDNA修復機構を利用しており,分裂の盛んな細胞にしか用いることができない欠点があった。つまり,非分裂状態にある生体内のほとんどの体細胞では自由な遺伝子改変が困難であった。これに対して,筆者らは非分裂細胞でも有効な新しい遺伝子ノックイン技術Homology‐Independent Targeted Integration(HITI)法やintercellular linearized Single homology Arm donor‐mediated intron‐Targeting Integration(SATI)法の開発に成功し,さまざまな生体内の体細胞で標的ゲノム配列に外来遺伝子を組み込むことに成功した。本稿では,ゲノム編集技術を用いた体細胞遺伝子操作に関する知見と,生体内ゲノム編集技術HITI法,SATI法について紹介する。

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© 2023 日本生物学的精神医学会
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