2023 年 34 巻 4 号 p. 171-178
脳磁気共鳴画像(MRI)研究が一般的となり,多施設データを適切に取り扱える技術開発が進み,機械学習による鑑別診断や予後予測,脳画像に基づく生物学的再分類が現実的となった。今後はこうした解析が一般的となることを見越して,遺伝情報などと組み合わせた階層性データを利活用する病態解明,臨床応用研究が重要になる。日本で精神疾患脳画像研究を推進すべき理由はいくつかあるが,その中でも,精神科医が研究に深く関与していることは重要であり,今後も臨床家,当事者との協同による臨床応用技術開発が必要である。病態理解の点では,小児期から老年期に至るまで,ライフコースにわたる脳画像データの結合が重要であり,これに付随する思春期発達の階層性データベースの利活用が期待される。質・量ともにデータが拡大し続けるなか,精神科医が担える部分はさらに限られてくるが,分野横断のチームを取りまとめ,精神科臨床研究が進むべき道を示すことが求められる。