抄録
脳磁気共鳴画像(MRI)が精神疾患の臨床研究に応用されて30年余りが経ち,少人数のケース・コントロール研究から,多施設共同研究,メタ解析と進展した。現在は多施設大規模データを適切にハーモナイズする技術が基本となり,疾患横断解析,非線形回帰によるnormative modelingがトレンドになっている。こうした処理のもとで得られる大規模脳MRIデータセットでは,機械学習やサブタイプ分類が比較的容易に可能で,今後はこの分類を利活用することを見越した多階層データベースの整備が必要となる。近年のMRI計測・解析技術の発展によって,初学者がすべてに取り組むことはさらに難しくなり,それはほかの階層,すなわち遺伝子解析などでも同様である。多階層データの質・量共にデータが拡大し続けるなか,精神科医が担える部分はさらに限られてくるが,分野横断のチームを取りまとめ,精神科臨床研究が進むべき道を示すことが求められる。