抄録
量子生命科学は新しい計測技術の開発とともに,生命のなかの量子性をも探ることをめざした領域として,2017年には幅広い領域の研究者を集めた量子生命科学研究会の形で発足した。2020年に量子生命科学の推進に向けて始まったQ‐LEAPのプロジェクトでは(A)生体ナノ量子センサの開発と応用,(B)量子技術を用いた超高感度MRI/NMR,(C)量子論的生命現象の解明・模倣の3つの柱のもとに研究が進められている。生体ナノ量子センサはダイヤモンドNVセンターの超高感度蛍光物質としての応用と,生体内温度,pHセンサとしての応用が進められており,超偏極MRIは生体内の高感度代謝分析が進められている。量子論的生命現象の解明は,現状で量子論的説明が提案されているのは渡り鳥の磁気コンパスで,脳の研究領域に関してはAI技術や量子コンピューターの応用と,量子論的な数理モデルの認知科学への応用が進んでいる。