抄録
本総説は,信念更新における量子ゼノン効果についての理解を深めるため,妄想に関連する認知バイアスを紹介し,量子認知モデルを用いたアプローチを探る。統合失調症を中心とする精神疾患における妄想の形成と訂正不能性にかかわるjumping to conclusionバイアスとbias against disconfirmatory evidence(BADE)の2つの主要なバイアスについて論じる。特にBADEに焦点を当て,量子認知モデルの概要とその最近の動向,さらに量子ゼノン効果の理論的背景とその実証的研究について詳述する。これらを通じて,妄想の形成と維持に対する理解を深め,将来的な研究の方向性を示すことを目的とする。