抄録
近年の脳MRI研究では,撮像技術の著しい進歩により高精度データの取得が可能になる一方で,機種間でのデータの質のばらつきや研究成果の再現性における課題が指摘されている。戦略的国際脳科学研究推進プログラム(国際脳)では,これらの課題に対応するため,国内18機関の多施設による高精度MRI研究を展開し,健常人および神経精神疾患患者7,000名以上の大規模データを収集した。本プログラムでは,MRI装置・機種を超えて調和した撮像プロトコール(HARP)を開発・導入し,特にトラベリングサブジェクトを活用した装置間差の評価や,高時空間分解能の構造MRI(空間解像度0.8mm),機能的MRI(2.4mm,10分間)や拡散MRI(1.7mm)を30分以内のプロトコールで実現した。さらに,HCP Pipelineを基盤とした標準的前処理解析手法の確立や,脳機能や微細構造の多様な解析アプローチの開発により,国際的にも高い水準の脳機能データベースを構築した。今後,本研究で得られた高精度データと解析手法は,脳の機能構築の解明や精神神経疾患の病態理解,さらには診断・予後予測への応用が期待される。