抄録
精神疾患における脳構造変化は,多施設間で収集された大規模な脳磁気共鳴画像(MRI)データの解析によって徐々に解明されてきている。しかし,施設間の計測手法やサンプル特性の違いに起因するバイアスが,解析の信頼性と解釈の一貫性を損なう要因となっている。筆者らはこれまで,複数施設における同一被験者の撮像(traveling subject:TS)に基づくharmonizationと統計学的な手法であるComBat‐GAM法を統合する新たな手法を考案してきた。この方法は,計測バイアスを低減しつつ,負担のかかるTS計測なしでも条件付きでデータ統合できる可能性を示唆した。さらに,大規模健常データを用いた非線形回帰によるライフスパンの軌跡を推定することで,疾患に特有の変動をより際立たせ,従来のメタ解析を超える高感度な解析を可能にするとともに,新規データの追加など柔軟な解析を可能にした。今後,統合されたデータを基に,精神疾患ごとの脳構造変化の特徴が明らかになり,疾患の病態解明や診断精度の向上に貢献することが期待される。