抄録
拡散MRIは,水分子の拡散現象を利用して脳微細構造を評価する手法であり,種々の精神神経疾患における早期診断や予後予測マーカーとしての有用性が示唆されている。しかし,従来の白質微細構造モデルでは複雑な線維構造を正確に推定できないことが知られている。この問題を克服するために開発されたfibre orientation distribution(FOD)は,単一ボクセル内の複数線維方向を分離可能であり,より複雑な線維構造を表現できるモデルとして注目されている。本稿では,拡散MRIを用いた従来の微細構造推定の概要とその限界,FODの発展について概説する。また,FODに基づく白質構造評価手法であるfixel‐based analysisを紹介し,精神神経疾患における有用性について議論する。Brain/MINDS Beyondを始めとする大規模コホートへの拡散MRI定量技術の応用により,精神神経疾患の病態解明や新規バイオマーカー開発が加速されることを期待する。