日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
多施設安静時fMRI結合変動解析により明らかになった精神神経バイオマーカの開発に影響する因子
山下 宙人
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ジャーナル オープンアクセス

2025 年 36 巻 1 号 p. 16-21

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抄録
安静時機能的結合(rsFC)法は,脳の機能的ネットワークを調べる方法として,基礎研究・臨床研究で活用されている。臨床研究では,診断・治療標的・サブタイピングを目的とした精神疾患バイオマーカ研究開発への応用が進められているが,実用的なバイオマーカの確立は,依然として課題である。本研究では,疾患要因,非疾患生体要因,計測要因がFCに及ぼす影響を包括的かつ定量的に評価するために,国際脳プロジェクト(BMB,2018〜2023年)で計測された大規模旅行被験者データとSRPBS(2012〜2018年)で計測された多疾患データセット,合計2,100ランからなる安静時実験の機能的磁気共鳴画像(fMRI)データを統合分析した。結果,非疾患要因である個人内試行間,個人間変動が2つの主要な要因であり,疾患変動は計測要因であるスキャナや計測プロトコル間変動と同程度の大きさであった。一方,少数ではあるが疾患変動が一番大きい結合も存在した。各要因について変動が大きい脳ネットワークを調べると,要因間でオーバラップはあるが異なるネットワークが影響を受けていることが観察された。本結果から,信頼性の高いバイオマーカ開発のためには,疾患変動が大きくかつほかの要因が小さい結合を選択すること,および個人内変動,個人間変動を減少させる実験および解析手法の開発が必要であることが示唆される。
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© 2025 日本生物学的精神医学会
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