抄録
一細胞レベルでのゲノムワイドな遺伝子発現解析を可能としたシングルセル解析は,我々が想像する以上に多くの細胞のサブタイプが生体に存在する可能性を示唆するとともに,さまざまな疾患におけるセルタイプ特異的リスク遺伝子の同定に貢献してきた。神経系の疾患でもシングルセル解析の導入は顕著であるが,特に神経細胞の変異のみでは病理を説明できない「神経発達症」や「神経精神疾患」において,細胞種特異的病理の同定に有効なツールとなっている。2015年には,米国国立精神衛生研究所(NIMH)がPsychENCODEプロジェクトを立ち上げ,ヒト死後脳大規模データを用いた神経精神疾患の学際的精神医学分野のコンソーシアムとして,2018年にフェーズ1を,続いて2024年にフェーズ2をScience誌上に発表した。特にPsychENCODEのフェーズ2(PsychENCODE2)はシングルセルとマルチオミックスに焦点を当てたプロジェクトであることから,本稿では最新のPsychENCODE2で報告された新知見をいくつか紹介する。