日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
最新号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 岩田 仲生
    2025 年36 巻2 号 p. 55-
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/25
    ジャーナル オープンアクセス
  • 野村 淳
    2025 年36 巻2 号 p. 56-60
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/25
    ジャーナル オープンアクセス
    一細胞レベルでのゲノムワイドな遺伝子発現解析を可能としたシングルセル解析は,我々が想像する以上に多くの細胞のサブタイプが生体に存在する可能性を示唆するとともに,さまざまな疾患におけるセルタイプ特異的リスク遺伝子の同定に貢献してきた。神経系の疾患でもシングルセル解析の導入は顕著であるが,特に神経細胞の変異のみでは病理を説明できない「神経発達症」や「神経精神疾患」において,細胞種特異的病理の同定に有効なツールとなっている。2015年には,米国国立精神衛生研究所(NIMH)がPsychENCODEプロジェクトを立ち上げ,ヒト死後脳大規模データを用いた神経精神疾患の学際的精神医学分野のコンソーシアムとして,2018年にフェーズ1を,続いて2024年にフェーズ2をScience誌上に発表した。特にPsychENCODEのフェーズ2(PsychENCODE2)はシングルセルとマルチオミックスに焦点を当てたプロジェクトであることから,本稿では最新のPsychENCODE2で報告された新知見をいくつか紹介する。
  • 文東 美紀, 岩本 和也
    2025 年36 巻2 号 p. 61-65
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/25
    ジャーナル オープンアクセス
    統合失調症,双極症などの精神疾患の病因を解明するために,これまでに多くの患者死後脳を用いたゲノム・エピゲノム研究が行われてきた。しかし脳は多くの細胞種からなるきわめてヘテロジニアスな組織であるため,バルク組織を使用した研究で検出された所見は,単純に組織内の細胞種の割合の違いを反映しているのか,真に疾患にかかわる表現型を示しているのかを区別することはきわめて困難である。この問題を克服するために,筆者らは精神疾患患者死後脳から神経細胞・非神経細胞由来の細胞核を分離し,さまざまなオミックス解析を行ってきた。本稿では,近年発表した統合失調症患者における体細胞変異および双極症患者におけるDNAメチル化解析について概説する。両研究ともに,患者群において神経細胞で特異的な興味深い所見を見出しており,今後のさらなる検証が期待される。
  • 貝塚 剛志
    2025 年36 巻2 号 p. 66-70
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/25
    ジャーナル オープンアクセス
    神経細胞間の情報伝達を担うシナプスには多種多様なタンパク質が集積している。特にシナプス後肥厚(PSD)には1,000種類以上のタンパク質が局在し,それらはシナプスの構造や機能において重要な役割を果たしている。質量分析によるプロテオーム解析はPSDに局在するタンパク質群の同定および定量に寄与してきた。近年では,さまざまな生理的条件や精神・神経疾患においてシナプスやPSDのタンパク質組成がどのように変化するかを分析することで,脳機能や疾患の病態の理解をめざす研究が活発に進められている。本稿では,PSDに局在するタンパク質群について概説し,生後発達期および精神疾患におけるPSDのタンパク質組成の変化について,筆者の最近の成果を含めて解説する。また,これらの知見が精神・神経疾患の基盤解明や新たな治療戦略の構築にどのように貢献し得るかについても議論する。
  • 柳下 祥
    2025 年36 巻2 号 p. 71-74
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/25
    ジャーナル オープンアクセス
    シナプス可塑性は脳が情報を長期保持するために重要な機序である。特に新皮質や海馬,線条体の興奮性シナプス後部には樹状突起スパインとよばれる構造がある。この構造的長期増強(sLTP)がシナプス可塑性の主要な細胞機序であり,海馬や線条体でよく調べられてきた。新皮質は知覚や運動,情動にかかわる脳の中心的な部位であるが,sLTPの制御機序については不明な点が多かった。特に新皮質では成熟に伴いシナプス可塑性が低下する一方,成熟後もスパインの形態可塑性が観察されており,一見矛盾するこの制御実態は不明である。最近の筆者らの研究では,若年期ではsLTPが高いがこれが成獣期にかけて抑制されることを見出した。この抑制はミクログリアがTNF‐αを介して制御していた。一方,成獣期であってもノルアドレナリン(NA)がミクログリアのβ2アドレナリン受容体を介してこの抑制を解除し,sLTPを促進していた。また,この機序は観察恐怖学習(OFL)における記憶形成にも関与していた。これらの結果から,ミクログリアとノルアドレナリンによる拮抗した制御が発達過程で出現し,成獣期の新皮質のシナプス可塑性を調節することを新たに見出した。
  • 平野 恭敬
    2025 年36 巻2 号 p. 75-79
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/25
    ジャーナル オープンアクセス
    脳神経ネットワークを形成する最小ユニットであるシナプスは,ヒトの脳では1,000兆にも概算される。シナプスは神経細胞に単純なつながりをもたらすだけではない。生化学的に性質の異なるさまざまなシナプスは神経回路の調整を行うことで固定的な神経ネットワークを変化させ,結果として動物の行動に多様性を生み出している。恐怖応答を例にとると,恐怖の対象となる脅威の感受性,恐怖情動の発現,恐怖による行動の表現といった恐怖応答の多段階でシナプス制御がある。注目すべきはこれらの過程は定性的なものではなく,動物の内的あるいは外的条件に大きく左右され,シナプス制御による生化学的な神経ネットワークの調節がうかがえる。さらには恐怖曝露による恒常的な変化として,不安症,うつ病,トラウマ疾患にみられる心的状態があり,これにも多くの生化学的に異なるシナプスの関与が示されている。本稿では,恐怖応答にかかわる多様なシナプスを俯瞰したい。
  • 松林 潤平, 髙野 哲也
    2025 年36 巻2 号 p. 80-85
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/25
    ジャーナル オープンアクセス
    脳内のシナプスは情報伝達の基盤であり,多様な高次脳機能の制御に不可欠な役割を担っている。複雑な脳機能の理解や精神・神経疾患の病態解明には,異なる脳領域に特異的なシナプスの構成タンパク質成分や分子メカニズムを同定することが重要である。しかし,従来の生化学的な解析手法では,生体脳から特定のシナプスを選択的に分離し,その詳細な分子情報を得ることは困難であった。このような背景のなか,近年,近位依存性ビオチン標識(BioID)法を応用した生体内BioID法が開発され,脳内の特定シナプスや細胞接着部位のプロテオームを高い空間解像度で網羅的に解析することが可能となっている。本稿では,進展を続けるBioID法による脳内のシナプスプロテオーム研究の最新成果を概説し,筆者らが新たに開発した生体内BioID技術を用いたアストロサイト‐神経細胞シナプス間の新規分子メカニズムの解明についても紹介する。
  • 和田 真孝
    2025 年36 巻2 号 p. 86-87
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/25
    ジャーナル オープンアクセス
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