日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
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近位依存性ビオチン標識(BioID)法を応用した脳内のシナプスプロテオーム
松林 潤平髙野 哲也
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ジャーナル オープンアクセス

2025 年 36 巻 2 号 p. 80-85

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抄録
脳内のシナプスは情報伝達の基盤であり,多様な高次脳機能の制御に不可欠な役割を担っている。複雑な脳機能の理解や精神・神経疾患の病態解明には,異なる脳領域に特異的なシナプスの構成タンパク質成分や分子メカニズムを同定することが重要である。しかし,従来の生化学的な解析手法では,生体脳から特定のシナプスを選択的に分離し,その詳細な分子情報を得ることは困難であった。このような背景のなか,近年,近位依存性ビオチン標識(BioID)法を応用した生体内BioID法が開発され,脳内の特定シナプスや細胞接着部位のプロテオームを高い空間解像度で網羅的に解析することが可能となっている。本稿では,進展を続けるBioID法による脳内のシナプスプロテオーム研究の最新成果を概説し,筆者らが新たに開発した生体内BioID技術を用いたアストロサイト‐神経細胞シナプス間の新規分子メカニズムの解明についても紹介する。
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© 2025 日本生物学的精神医学会
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