本研究は,人生に危機をもたらす病いの体験からの肯定的変化について,中高年の女性がん体験者に焦点をあて,肯定的変化とそこに関連する要素,要素間の相互作用を明らかにすることを目的とした。40 代から 60 代の 9 名(乳がん 7 名,子宮がん 2 名)に面接調査を行い,内容分析を行った結果,43 の概念から 18 のカテゴリー,12 の大カテゴリーに統合された。がん体験者の肯定的変化の研究に見られる外傷体験後成長(posttrau- matic growth ; Tedeschi & Calhorn, 1995)との比較において,「変化への希求」「行動レベルでの変化」など,新たな要素が認められた。属性による傾向としては,罹患からの経過期間が 5 年未満の 50 代の乳がん体験者で子どもがいる方が,肯定的変化および関連要素を多く表現していた。カテゴリーの関係は,相互に作用するものが多くみられ,内的要素と外的要素を行き来しながら変化するモデルが示された。がん体験の様々な苦悩のなかで,外的な資源を動員しながら,熟考し,気づきや変化を認識するとともに,変化の後も,新たな気づきや外的な資源と関連しながら,変化していくことが示唆された。中高年の女性がん体験者における関係性は複雑であり,選択と決定にも影響することから,支援に携わる者は,個別の心理社会的背景,社会との関係を考慮した支援が必要である。